在宅点描(9日目)

木曜は会社に出勤していたので在宅は9日目になる。

8時すぎ起き。仕事がほどほどにある。黙々。
昨日会社からポケットwi-fiを支給してもらい、仕事のやりとりもスムーズにできるようになった。何より通信料の心配をしないことがこんなにも楽だとは。重いデータの送受信には相変わらず時間がかかるけれど、それでも家の回線を使うよりずっと楽。

私の上司はこちらの連絡にあまり返事を返さない人で、メールもチャットもあまり返事をくれない。普通に出勤していた時は「あれどうなりました」と口頭で追いかければよかったけれど、テレワークだとそうはいかない。それがだんだんしんどくなってきた。
「そういう人だし」と自分を納得させることへの限界。というかそもそも返事してくれよ。

誰からもリアクションがないと、自分が本当に誰かと一緒に仕事をしているのか不安になる。せめて自分だけはこまめにリアクションする人になっておかないと。そう思いすぎた結果、リアルでは寡黙なのにネット上では饒舌なオタクみたいになってしまった。みたいというか、「それ」でしかないのですが。お絵かきチャット世代。

お昼はキャベツとハムとたまごを蒸したもの。今日は木曜の夜にスーパーで買ったハーゲンダッツを食べる日としていた。ホワイトミント&チョコ。なので昼からペースを落としておく。

仕事がほどほどにあったけど、ほどほどにしかなかったので、仕事の本を読んだりしながらのろのろ仕事をしてペースコントロール。ビジネス書のいきなり太字になるところが嫌い。「うるせえ!」と思う。いきなり声がでかくなる人間も苦手だ。凪っていたいね。

夜、めちゃくちゃしょうもないアイデア出しに誘われて参加。「しょうもない」は「アイデア出し」ではなく「アイデア」に掛かっている。久々にアホな打ち合わせに参加できて、リラックスできた、ような。ただ、私以外全員おじさんだったので地味につらかった。入社前までは男女比なんて気にしていなかったけど、最近つらい。会話の共通点が全然ないし、おじさんはおじさん同士で仲がいいから。入る隙なし。トホホ……。でも最近は「このままだったら辞めるからな〜」という気持ちでいるので耐えられる。

今日は終始おだやかな気持ちだった。平穏というか、落ちるとこまで落ちたからもう特に何も考えることがないというような感じ……。最近覚えておくべきことを忘れてしまったり、会話が頭に入ってこなかったりしていて、少しずつ仕事に支障が出てきている。精神状態と関係あるかわからないけど。頑張りたい……。

ひとまず土日はよく寝ようね。天気も悪いみたいだし。こんな何のオチもない日記。終業。

在宅点描(6日目)

8時半起床。もうだめだ。

サンドイッチのパンが6枚残っていたので、バターとシロップ(森永のホットケーキミックスについてるやつ)を塗ってぐるぐる巻きにしたやつをとくダネを見ながら6こ食べた。とくダネなんか見たの何年ぶりだろ。ロゴが四つの緑の四角形と「!」で構成されていた頃しか知らない。

ゴミを出したら小雨が降っていた。知らない間に取り付けられていたカラスよけのネット。だれも掛けていない。
部屋に戻った時の「わ〜、部屋だ」という気持ち。見慣れた景色というか、またこの場所かといううんざり感。

上司から「みなさんテレワークいかがですか」という書き出しでスプレッドシートが送られてきた。一週間やってみていいところ・悪いところを共有してほしいとのこと。
全員が見る場で書ける長所と短所てあんまりないな。平日でも布団が干せることが嬉しいけどおしりと膝と腰が終わる、等。上司に言ったとて……。TPOに合わせた発言って難易度が高い。在宅で一人だとなおさら。このまま判断力が鈍って倫理観と道徳心が消失したら面白いな。

ずっとレタッチ大祭り。ノートでレタッチするのつらい。そもそも腕もないし……。
そういえば、ボー夏(ボーナスと打とうとしたらミスでこう出た。夏のボーナスだから間違いじゃないし、このままにしておく)が出たら新しいmacを買おうと思っていた。macbookとモニターを買うか、iMacを買うか迷っていて、先輩に訊いたりしていたけど、だんだんボーナスがでるかどうかが怪しくなってきた。この状況で出たとしてもビビるんだけど。今の貯蓄でも問題なく買えはするんだけど、こんな状況を経験すると少しでも貯蓄しておいたほうがいざというときの為になることを痛感せざるを得ないし。こうして消費がされなくなっていくのか。お前のせいです、あ〜あ(お前=任意の組織を入れてください)。

どんどんお昼の時間がくるのが早くなる。それだけ在宅に慣れたということなのかしら。以前母親がマスクと一緒に送ってくれたラーメンを食べる。たまねぎのみじん切りをのせるとおいしいと書いてあったので、きざんだ新玉をめちゃめちゃのせた。口がずっとねぎ。在宅のいいところ、昼にきざんた玉ねぎをめちゃめちゃ食べても大丈夫なところ。

夕方の打ち合わせ、難しい話をされて真顔で画面を凝視していたら部長に「だいじょーぶ?」と聞かれた。照れる。正面顔が大写しになるから感情の機微がバレやすいんだな。あと遠隔なぶん、全員の気配り力が1.4倍くらいになっていてみんな優しい。私も優しくありたい。

日曜日にCDを取りに会社近くまで行った。ビジネス街なので土日のほうが人通りが少ないだろうと思ってのことだったけど、大雨もあいまって通りを歩く人をほとんど見なかった。朝は会社にむかって急ぐ人、夜は居酒屋へとたらたら歩くおじさんの集団で賑わう街なので、衝撃だった。夜中と見まごうくらい人気の少ない地下鉄の車内、節電と称して一列封鎖されている改札、軒並み閉まっている飲食店、どさくさに紛れて閉店していた唐揚げとコーヒーがおいしい定食屋さん。本当にこんなことがあるのか。
「慣れてきたな」なんて迂闊に思い上がっていると、ふいに後頭部をがんと殴られるような日々が続いている。

夜、ど近所の先輩とスーパーに行く。本当はこんなことだめなんだろうなあ、と思いながら、「危機感のない親の行動を子供である自分が咎めることのつらさ」についてぽつぽつ喋りながら小雨の夜道を歩いた。スーパーだけが明るくて、半額のおすしやお惣菜を横目にサラダと生姜チューブを買う。あと、さけるチーズのバター醤油味。これは2本で1セットのやつだったので、先輩と割り勘した。100円。「『さけ』の部分でいいですか?」と左側のほうをもらった。

日曜日に時間を持て余して焼いた手羽元のローストチキンと、サラダと、さけるチーズを食べながらニュースを見る。疫病で親を亡くした人のインタビューを見て少し泣く。在宅になった今、自分の身の安全はとりあえず確保できたぶん、親のことが急に不安になる。地元は飲食店もデパートもほとんど通常通り営業しているらしい。どうか何事もなく終息してほしい。今更「何事もなく」と願うことがどれほどまでに残酷なことなのは分かっているけれど。どうか。終業。

在宅点描(4日目)

7時起き。

今日は一日社外で仕事。朝ごはんを作る暇がなくて、渋々カルピスだけ飲んで出発。2日ぶりの外。思っていたより人は出歩いていて拍子抜け。危機感を持っているのは自分だけなのでは、と怖くなる。とはいえ電車はガラガラで、やっぱり徐々に世界がおかしくなりはじめている。

大阪駅もひっそりしている。高校の時よく始発で学校に行っていて(通学に異常に時間がかかっていた)、その時のひっそりした駅の雰囲気が結構好きだったんだけど、まさにそんな感じだった。ただ始発のときのような薄暗さはなく、まあまあ日中だし、天井が高いターミナル駅ということもあいまって、不気味。そういえば銀河鉄道999が出発するメガロポリス中央駅もやたらひっそりしていた記憶がある。記憶だけかもしれない。

キオスクでパン買おと思ったら臨時休業だった。びっくり。しかたなく少し離れたお土産売り場兼コンビニでちぎりパンを買う。セブンイレブンのチョコチップが入った白いちぎりパンのことが好き。自分が思っていたより世の中が暖かくて、歩いていたら少し汗ばんでしまった。季節をナメていた。完全に春じゃん……ね。

本当に一日中社外に出ていたので書けることがない。二日ぶりに会った上司にやたら顔を凝視されたので、何、と思ったら「眼鏡変えた?変えたやろ、眼鏡。変えてへんの?」と矢継ぎ早に聞かれた。変えてない。久々に見知った生身の人間を見たので気が大きくなっており、「こんな時に買うわけないじゃないですか!」とでかい声で言ってしまう。反省。上司は顔がいいので異常に動揺してしまった。ありがとうございます⤴︎

お昼は出前館、と書いたところで注文してくれた人にお金を払うのを忘れていたことに気づく。しまった。ああ〜。最悪だね。おしまいだ。誰もお前を愛さない。次会う時に払うと誓いました。今。ああ。めちゃめちゃテンション下がった。

仕事が終わった後、上司と一駅ぶん歩きながら仕事の話をする。でかい桜の木がたくさん植えられている公園。でかい鉄橋。JRの一駅ぶんをナメてはいけない。ここ数ヶ月で感じていた仕事の不満を8割ぐらい言った。ちゃんと判ってもらえた気がする。安心した。不満や疑問の指摘をすることにずっと抵抗があったけど、それに対しての共感をもらえることが多くて、臆せず言わなきゃなと最近思います。「ちゃんと言ってな」と上司にも言われる。ちゃんと言ってるで。というかそういうことを言ってくれる人が上司でほんとうに恵まれているな〜〜と思う。仕事が減ったのはつらいけど、減ったからこそ広場で大の字になるような気持ちで無責任に好き勝手できる余白ができればなあ。

大阪駅まで戻って、流されるまま環状線に乗り上司と別れる。aikoの花火を背に去っていく上司。夏の星座にぶら下がって上から花火を見下ろして。この曲好きなんだけど「三角の目をした羽ある天使」がちょっとこわい。三角の目って、藤木くんじゃん!

流されるまま乗ったせいで逆回りに乗ってしまった。目的地が遠い上に全然縁もゆかりもない駅で濃厚接触している学生カップルを見た。私も愛(LOVE)が欲しい。

今日はちっとも在宅してないな、日記を書いていいのだろうか、と思っていたら、夜21時半から打ち合わせを入れられてしまい、半目で参加した。なんなんだ。在宅の悪しきところはこういうところだ。

帰り道買ったしゅうまいと、ごはん。レタスをレンジで蒸したやつにごま油と塩。を食べて、打ち合わせに参加。24時まで(本当もう何……)。そして終わっていなかった資料づくりをやって今。も〜〜〜〜〜〜!!!!!

明日は早く退勤するぞ。退勤したとて一生家ですが。ワハハ。
東京事変のアルバムを会社近くのセブンで受け取りにしたまま忘れていて発売日がすぎた。平日か土日、どっちに行くのが安全かな。安全が何もないこの世界において。終業。

在宅点描(3日目)

8時半まで寝た。

4枚切りの食パンにバターのアップルシナモンのジャム。アヲハタのアップルシナモンのジャムが好きすぎる。本当に。全員食べてください。

あさイチを見たらNHK社員以外バーチャル出演になっていた。ひと画面に二分割で並んでいる華大さんが戦闘アニメのクライマックスと同じ構図。L字テロップとあいまって、日に日に明るいディストピア感が増す今日このごろ、みなさまいかがお過ごしですか。

朝一から南国背景の上司と打ち合わせ。今日は普通に家だった。こちとら一時間前に起きたばかりなので全く頭が回っておらず、相手が「うーん」と悩んでいる会話の間で完全に“無”になる。声もガサガサ。終わった瞬間龍角散をなめる。おいしい。高校時代龍角散にハマっていてしょっちゅう食べていたら、「墨汁の匂いがする」と言われて、それ以来(墨汁)と思いながら食べている。墨汁の匂い好き。

今日は仕事がある日だった。他部署のひとに業務連絡でメールを送ったら「在宅どう?不便ないですか?」とひとこと。そのひとことが嬉しくて、感嘆符多めの返事を送ってしまう。電車に乗らなくていいのでむしろ安心してます、と書いたけど、気持ちはずっと不穏のまま。本当の安心、この世界線にはないなあ。

徐々に足腰が悲鳴を上げてくる。座布団があるとはいえ、ちゃぶ台で仕事をし続けるのはなかなかつらい。おしり、というか、なんかおしり内部にある硬めの骨が痛い(骨は大抵硬い)。ほしい!椅子!

あいまにtwitterを見たら、大学の友達が私のこれを読んで卵をゆでたとツイートしてくれていた。うれしい。こんなことって!
ゆで卵をゆでている時間はかなり祈りに近い気持ちになっていて、あの神聖な空気が伝わっていればいいなあと思う。そんなこと一言も書いてなかったけど。ちょっとセンチメンタルになる10数分間(たまごサラダなので固めにゆでてました)。

13時から打ち合わせだったので、少し早めにお昼。インスタントラーメン。帰省時に親がくれた、明星のいいやつ。ここでもまた備蓄食料を使ってしまう。米を炊け。また安心の残機を減らした。誰もお前を愛さない。豚バラキャベツにんじんもりもりラーメン。昨日の焼きうどんと具がほぼ同じ。味が違うのでOKです。少し時間が余ったので、インターネットで椅子を買う。無印のポリプロピレンスツール。年始に買おうとしたらネットストアが死んでいて、今ふと見たら売り切れていて、慌ててロハコを見たら残1だったのですべりこみで買えた。白くてまろいスツール。届くのは来週らしい。耐え。8時-9時受け取りにしたので、早起きせねば。

同僚から連絡があり、金曜家族が家に居る、テレビ会議の邪魔なのでどうしても私の家で作業したい、と言う。いやだなあ。と思いつつ、渋々OKする。私が逆の立場だったら同じことを言っていたかもしれないから。でもなあ。本当はいやです。ここまできたらどこまで人間と直接会わずにやっていけるか、自分を試したい気分だから。二番目の理由は緊急事態宣言が出ているからです。どこまでも自分本位。

夕方、部署全体で打ち合わせ。全員がワッとZoomに集まって、一人が戸惑いながら喋るすがたをみんながニコニコしながら見守っているのが全部真正面からわかってちょっと泣きそうになる。こんなのって、愛じゃん。「反応」の拍手のボタンをめちゃめちゃ押した。うれしかったから。出張で全然いないひとも、東京支社のひとも、みんないて、みんな映像だから、みんなフラットに話せる。それが嬉しかった。

そのよろこびを噛み締めながら資料を作っていたら夜になった。仕事をしながら晩ごはんのことを考える。動いてないのにお腹がすくのは不思議だなあ。お腹がすいて死にそうだから、お米を炊くのはまたにして、キャベツとツナでスパゲティを作ろうかな。またキャベツか。…………。

音がほしくてテレビをつけたら閑散とした梅田が映っていてびっくりした。来るとこまで来たな。「悔しい」と言って泣いている人がいた。ウイルスがもっとわかりやすくでかいゴジラみたいなやつだったら物理的に怒りをぶつけられるのにね。なんだかやり切れない。

梅田の紀伊國屋も臨時休業らしい。あー。本当に本屋に行けない一ヶ月が来てしまったんだ。来週に出る「ミステリーズ!」どこで買えばいいんだ。バイトしてた本屋の売上を心配してしまう。バイトしてた時お世話になった上司(別店舗に異動になった)は、先月会った時すでにヤバいと言っていた。こんなことで本屋がなくなるのは悔しい。どうにかして、家から出ずに支援する方法はないものか……。配送やってるか連絡してみようかな。同じ本でも買うならAmazonより書店がいい。どうやって買ったかも含めて買い物。

仕事をしながらきょろきょろしてしまう時間が増えた。「ちゃうもん見たいな」という気持ちが出てきていることに気づく。テレビ、パソコン、ベランダから見えるボロボロの木、台所、洗面台、干してる洗濯物、を繰り返し見る生活。自宅に飽きるという感情。意味もなく本棚をじっくり見たり、横になって天井を見たり、視界を変えてみても、結局それは飽きてる家の一部でしかなくて、私が今本当に見たいのは、淀川を渡る大きな橋からの眺めだったり、知らない人がたくさん歩いている人混みだったり、夜の京都駅中央改札だったり、行き慣れた本屋の島台だったり、ロイヤルホストのメニューだったりする。営みが見たいよ〜。三日目にしてこれなのだから、一ヶ月近く在宅をしている人は本当に偉い。ノーベル在宅勤務賞じゃん。

さっき「自分を試したい」なんて言ってたものの、明日は社外の人と打ち合わせがあるので外に出る。二日ぶりの外。必要必急の外出。とはいえやっぱり少し怖い。でも久しぶりに人と会って話せる。営み、は見られるだろうか。電車には乗るから、それはまあ営みの一部か。特急いとなみ104号(ない列車)。終業。

在宅点描(2日目)

7時すぎ起き。
昨日の夜、明日の朝はサンドイッチにするぞと思ってゆで卵を潰していたらなんだか寂しくなって泣いてしまった。運動して忘れるしかない。ゴミ出しついでにウォーキング。大きいカバンを持って出勤する人たちと反対方向に軽装で歩く。自分も先週までは「あっち側」だったのに。

途中パン屋さんを見つけて、なんだかよさそうだったので、在宅中に一度は行きたい。途中行列が見えて、「たこ焼き屋?」と思ったら隣のドラッグストアだった。マスクの入荷数25個。歩きながら人数を数えたらちょうど25人が並んでいた。あるんだ〜実際。この光景。遠回り気味に一駅ぶんを往復したら、30分くらいで歩けるだろうと思っていた距離に50分くらいかかってしまった。単純に土地への理解がない。在宅なのに遅刻した。何?

上司に連絡してから、洗濯機を回してサンドイッチをつくる。仕事が本当にない。きゅうりの塩もみ。マヨネーズと胡椒。一枚にたまごサラダ、一枚にきゅうりサラダを塗ってぱふっと挟む。真ん中をこんもりすると、切ったとき綺麗らしい。実際綺麗だった。
サンドイッチのパンが6枚1セットだったので、バカみたいな量のサンドイッチができた。お皿にぎうぎう押し込む。歩いているとき「なんとなく、カルピス」と思ったのでカルピスを作る。濃いめ。友達が遊びに来たときのロックアイスが冷凍庫を圧迫しているので多めに入れる。テンションを上げるべく、脚付グラス。脚が付くだけで高級感。ルネッサンスか? きゅうりがしょっぱくておいしい。たまごサラダは胡椒多め。もっと入れてもよかった。パンはあと6枚残っている。冷凍庫を圧迫している。

仕事が本当にない。ニュースを見ながらただひとつの仕事をゆっくりする。合間に電話がかかってきて、頼まれた資料をつくる。あんなにサンドイッチを食べたのに、お腹はちゃんとすく。仕事してないのに。

白ごはん.comの焼うどんを作って食べた。焼うどんは醤油味派。ネギを初めて入れたけど、とろとろしておいしい。安心の残機をひとつ使ってしまった。不安になる。

お昼は何をしていたか本当に記憶がない。
ロザンの道案内しよっ!を見たら元気になるかなと思ったら、トミーズ健が怒っていた。内容はなるほど確かにそれはそう、と納得するものだったけど、みんなピリピリしてるんだなと思ったら余計元気がなくなった。そもそもこんな時期に道案内をしてはいけない。過去の総集編みたいなのをうまいぐあいにやっていた。久々に見たらみんななんか老けてたね。

夕方、同僚から電話。本当に暇だった、と嘆くとブレストのお誘い。全員同期の会だったので、バーチャル背景をオーロラにして参加する。あることないこと適当に言いながらも、宣言がいつなされるのか気になって、消音でテレビを流しておく。緊急事態なんてそれはずっと前からそうなのにね。気持ちがずっと。
話の合間にちらとテレビを見たらニュース速報というテロップが見えたので全てを納得した。文字を見ていなかったけど「おあ 出た」と大声で言ってしまう。画面の向こうで「おあ?」と聞き返す同僚の声。

まあ、まあ出たところで何も変わらない。商業施設が一ヶ月閉まるのはつらい。さようなら、無印良品週間(ネットストアってどうしてあんなに欲しいものが買えないんですかね?)、夏に使うグラスが欲しかった、スリッパも。春服も欲しかったけど、もう着てく場所がないでしょうね。本屋にも行きたかった、私は会いたい人がいる本屋に行くことだけを希望に仕事に励んでいる節があるんだよ。文化的なことにお金が使えないことへの失望がじわじわと指の隙間から絡みついてくる感覚。おいしいお菓子も買えないな、なくなってしまった仕事のこともまた思い出してしまう。web会議が案外悪くないこと、時差出勤で得られる朝の一時間、得たものはあったけど、やっぱりまだ失ってしまったもののほうが多く感じてしまう。かなしいね。逢いたい人に逢えないのがつらい。

夜になってからいくつか仕事の電話があり、結局終業時刻は普段どおりだった。あんなに仕事なかったのに。

陽の光が恋しくて、お昼は窓辺にサイドテーブルを出して食べた。渋い色した焼うどんだったけど。明日以降の日本のことを論じるテレビの音を他所に、穏やかな光に当たりながら、私が自分がやわらかく絶望していることを知る。二週間後、の常套句が伸びに伸びて、今一ヶ月後と言われても、一ヶ月後がどうなっているかなんて誰にもわからない。この状況が何を以って終結とされるのかもわからない。増えなければオッケー、めでたし!じゃないし。完全に大丈夫になったところでパンパカパーン!って鳴ってくれたらな。完全に大丈夫になるのがいつか、分からないけど。

いまできることって生きることだけだな。泣くの我慢するのも、甘いもの食べて幸せになることもできないし。生きるだけ。生きてれば大丈夫の世界。許されたい。
そういえば昨日寝る前に短編小説をひとつだけ読んだらきもちよく眠れました。今日もひとつ読もうね。うまい具合のやっていきを自分で見つけて行くしかない。精神サバイバル。終業。

在宅点描(初日)

時差通勤推奨といえど全員時差通勤したらそれはもう時差ではなくただただ全部ズレなんだよな、マスクをしていない人間には近づくなという癖に支給はしてくれないし、強い思想があってしてない訳じゃないんだよ。そんな気持ちが日に日に募り、ノイローゼ気味になっていたところでようやく「一週間後に全員在宅」の指示が出た。緊急事態宣言宣言。その一週間後が今日だった。

日記は読み返すことに楽しみがあって、それまではただ苦しいマラソンで、半年以上続いた試しがない。でも、読み返すことに意味があるなら、日記を付けるチャンスはまさに今なんじゃないか、と思った。ので、付けます。書を捨てず街へ出るな。終わりの見えないドキドキ在宅ライフ、始まり始まり〜〜パフ。

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三年半、三つめの場所

17時9分の電車に乗っていた。
そのためには10分前に家を出ないといけなくて、そのためには15分前には家を出る準備をした。ガスの元栓、家電のコンセント、換気扇、家の鍵の確認。それらをスムーズに終えるには、30分前には身支度を終えなければならなかった。
17時30分に到着して、17時40分には「お早うございます」と上長に頭を下げる。その日のノートにざっと目を通して、制服に腕を通す。タイムカードを切って、店頭に出る。いらっしゃいませ。いらっしゃいませ。いらっしゃいませ。流し目で商品を見る。あれの場所が変わったな。あれが入ってきたという新しいやつか。いらっしゃいませ、いらっしゃいませ。見ず知らずの人、人、人々、の間をすり抜けて、私はレジへと向かう。おはようございます。引き継ぎありますか。はい。分かりました。お疲れ様です。いらっしゃいませ。お待ちのお客様こちらへどうぞ。

これを三年半やっていた。
一回生の秋、私は本屋でアルバイトを始めた。
そしてつい五日程前、卒業式の前々日に退職した。アルバイトごときが「退職」て。でも、「辞めた」と言うほどあっさり言い切れず、わざとらしく重たい方の言葉を選んでしまわずにはいられない。

小学生の頃から本屋で働くのが夢だった。
「本屋で働くことがずっと夢でした。せいいっぱいがんばります」
初めの挨拶でそう言ってたよねえ、と先輩に遠い目をしながら言われたけど本人は全く覚えていない。
バイトをするなら本屋か無印良品だった。無印良品は勤務時間の都合が合わず泣く泣く諦め、地元のケーキ屋に電話をしたら「折り返し電話します」から連絡がなくなり、やけくそで応募したのがバイト先だった(地元のケーキ屋は去年とつぜん潰れた)。
テストがあったり、新卒採用ばりの細かな履歴書を記入させられ、面接では好きな本を聞かれ、「森見登美彦です」と一番あたりさわりのないことを言ったりした。採用の電話は京都駅のコインロッカーの裏で受けた。10月16日が初出勤の日だった。

「仕事ができない人間=人権がない」と思っていた(る、かも)ので必死になって仕事を覚えた。実は大学の授業中にバイト用のマニュアルを自力でこさえていたりした。店長や社員の人は全員目がめちゃめちゃ怖くて、言葉も刀のように尖っているし、仕事はできるし(正社員なので当然です)、この人たちを敵に回したら働いていけへんぞ、の一心で慣れない大声を出し、新聞の読書欄を読み込み、頼まれたポップもめちゃめちゃ頑張って描いていた。
この怒られるのが怖くて仕事を頑張る姿勢って、白い表紙にめちゃめちゃ力強いゴシック体或いはサンセリフ体でタイトルが書いてある系のビジネス本ではめちゃめちゃダメだと言われてそうだけど、私にはもうこうすることしかできない。社会人になったらもう少し自分のために働きたいと思っているけど。

デザインやイラストの仕事もいくつかさせてもらった。
デザインはさておき私はオタク感バリバリの絵しか描けないのでものすごく申し訳なかったのだけれど、喜んでもらえたようでうれしかった。サイネージ用の広告なんてものも作ったけど、これは大学では使わないメディアでの制作だったので、普段自分が意識していることを新しいメディアでどう活かせるかを考えるいい機会になった。何よりバイト先の人が私のやっていることを解ってくれていることが嬉しかった。

私は中学生の頃から、なんとなく「家」「学校」以外にもうひとつ居場所を持っていることが必要だなと感じていて、それは学校が違う友達だったり、高校だと画塾だったりしたのだけれど、大学ではバイト先がそんな第三の場所になってくれたなと思っている。本当に楽しかったな〜。なんだこれ。自分よがりな感想で、ブログの意味をなさないな。

身バレしない程度にあったことを書くか……。
騎士団長殺しを発売前に見れちゃった、広辞苑の第七版が出た、「夫のちんぽが入らない」を言わせようとするおじさんからの電話、お客さん同士の喧嘩で警察が来る、おまわりさん「こんな近くで見たことないやろ」とニッコリ、お客さんに怒られたので申し訳ない顔で接客してたら「あなたどうしてそんなに無表情なの?」と追い叱責、棚卸しのお祭り感、めちゃめちゃ好きな作家さんが店に来るも会えず、あ〜るの完全版が出たのに誰とも嬉しさをわかりあえない、香川からバイト先まで直行したら死んだ、福井からバイト先まで直行したら死んだ、東京での面接のあとにバイト入ったら死んだ

以上です。
本屋、働けば働くほど業界のヘンテコさや世の中の動きとの接点の多さに驚かされ、なかなかに奥の深い仕事だった。自分の身に何かが起きてデザインなんてもうやらん、クソ、と思ったらまた戻ってきたいなと思う業界だった。当分はデザインの世界で……。

みんな、本屋に行く時は少なくともタイトルは一字一句間違えずに覚えて行ってくださいね。
でないと店員と客の推理ゲームが始まってしまうので。