在宅点描(6日目)

8時半起床。もうだめだ。

サンドイッチのパンが6枚残っていたので、バターとシロップ(森永のホットケーキミックスについてるやつ)を塗ってぐるぐる巻きにしたやつをとくダネを見ながら6こ食べた。とくダネなんか見たの何年ぶりだろ。ロゴが四つの緑の四角形と「!」で構成されていた頃しか知らない。

ゴミを出したら小雨が降っていた。知らない間に取り付けられていたカラスよけのネット。だれも掛けていない。
部屋に戻った時の「わ〜、部屋だ」という気持ち。見慣れた景色というか、またこの場所かといううんざり感。

上司から「みなさんテレワークいかがですか」という書き出しでスプレッドシートが送られてきた。一週間やってみていいところ・悪いところを共有してほしいとのこと。
全員が見る場で書ける長所と短所てあんまりないな。平日でも布団が干せることが嬉しいけどおしりと膝と腰が終わる、等。上司に言ったとて……。TPOに合わせた発言って難易度が高い。在宅で一人だとなおさら。このまま判断力が鈍って倫理観と道徳心が消失したら面白いな。

ずっとレタッチ大祭り。ノートでレタッチするのつらい。そもそも腕もないし……。
そういえば、ボー夏(ボーナスと打とうとしたらミスでこう出た。夏のボーナスだから間違いじゃないし、このままにしておく)が出たら新しいmacを買おうと思っていた。macbookとモニターを買うか、iMacを買うか迷っていて、先輩に訊いたりしていたけど、だんだんボーナスがでるかどうかが怪しくなってきた。この状況で出たとしてもビビるんだけど。今の貯蓄でも問題なく買えはするんだけど、こんな状況を経験すると少しでも貯蓄しておいたほうがいざというときの為になることを痛感せざるを得ないし。こうして消費がされなくなっていくのか。お前のせいです、あ〜あ(お前=任意の組織を入れてください)。

どんどんお昼の時間がくるのが早くなる。それだけ在宅に慣れたということなのかしら。以前母親がマスクと一緒に送ってくれたラーメンを食べる。たまねぎのみじん切りをのせるとおいしいと書いてあったので、きざんだ新玉をめちゃめちゃのせた。口がずっとねぎ。在宅のいいところ、昼にきざんた玉ねぎをめちゃめちゃ食べても大丈夫なところ。

夕方の打ち合わせ、難しい話をされて真顔で画面を凝視していたら部長に「だいじょーぶ?」と聞かれた。照れる。正面顔が大写しになるから感情の機微がバレやすいんだな。あと遠隔なぶん、全員の気配り力が1.4倍くらいになっていてみんな優しい。私も優しくありたい。

日曜日にCDを取りに会社近くまで行った。ビジネス街なので土日のほうが人通りが少ないだろうと思ってのことだったけど、大雨もあいまって通りを歩く人をほとんど見なかった。朝は会社にむかって急ぐ人、夜は居酒屋へとたらたら歩くおじさんの集団で賑わう街なので、衝撃だった。夜中と見まごうくらい人気の少ない地下鉄の車内、節電と称して一列封鎖されている改札、軒並み閉まっている飲食店、どさくさに紛れて閉店していた唐揚げとコーヒーがおいしい定食屋さん。本当にこんなことがあるのか。
「慣れてきたな」なんて迂闊に思い上がっていると、ふいに後頭部をがんと殴られるような日々が続いている。

夜、ど近所の先輩とスーパーに行く。本当はこんなことだめなんだろうなあ、と思いながら、「危機感のない親の行動を子供である自分が咎めることのつらさ」についてぽつぽつ喋りながら小雨の夜道を歩いた。スーパーだけが明るくて、半額のおすしやお惣菜を横目にサラダと生姜チューブを買う。あと、さけるチーズのバター醤油味。これは2本で1セットのやつだったので、先輩と割り勘した。100円。「『さけ』の部分でいいですか?」と左側のほうをもらった。

日曜日に時間を持て余して焼いた手羽元のローストチキンと、サラダと、さけるチーズを食べながらニュースを見る。疫病で親を亡くした人のインタビューを見て少し泣く。在宅になった今、自分の身の安全はとりあえず確保できたぶん、親のことが急に不安になる。地元は飲食店もデパートもほとんど通常通り営業しているらしい。どうか何事もなく終息してほしい。今更「何事もなく」と願うことがどれほどまでに残酷なことなのは分かっているけれど。どうか。終業。